病院 ~重い病名を告げられた時~

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病院 ~重い病名を告げられた時~

重い病気を期せずして告げられた時
患者さんの取るべき態度とか対応
ということですね。

非常に難しい問題だと思います。
私が思う取るべき対応について
お話しする前に
医師の側としてどういう気持ちで
患者さんにお伝えしてるのかっていうのを
聞いて参考にしていただいてから
決めていただきたいなと思うんですが

医師の側としても
非常に重い病気ですね
それが重い病気であっても
手術で完治、根治と言いますか
手術すれば治ってしまうような病気の場合は
比較的お伝えする気持ちも楽なんですけども

非常に転移がたくさんあって
もう先が見えないような
そういう重い状態をお伝えするっていう時は
私たちの側としても
非常にどんよりとした暗い気持ちになるんですね。

やむなくお伝えしなきゃいけないですから
重々しくお伝えしてしまうと
必要以上に暗さを感じてとられて
もう先の見えないような
暗い伝わり方をして
非常にショックを受けられるっていう
期せずしてそういうことになるケースもありますし

そういうことを経験して
あまり重々しくないように
淡々と事実のみをお伝えするってなった時に
これまたあの受け取られる側の
問題でもあると思うんですが

すごくあっさりとさらっと大変なことを
告白、告知されて非常に冷たく
心無い医者だなっていう風に感じたって
捉えられる場合もあると

結局はどういう伝え方をしても
辛いことでありますので
まあ何と言いますか
厳しい捉えられ方になってしまうって
いうことを経験します。

アメリカっていますか
海外の話をちょっと例として挟みますと
海外では重い病気をご本人に
さくっと伝えないと
訴えられることが多いって言いますか
まぁほぼ間違いなく訴えられ
おそらく裁判で負けるっていうことになってしまいます。

それはもしそのご本人がそういう事実
いついつまでに身体活動が
できないほど弱ってしまうだとか
命がまぁ終わってしまうだとか
いうことを告げられたとすれば
その期間に私はこんなことができたのに
知らなかった故にできなかったっていうような
そういう機会損失と言いますか
そういうことが非常に問題となって
裁判では負けてしまうんですね。

ということで医者の側は外来で
あっさりとあなたはどこどこ癌ですよって
だいたい手術しても
5年生存率は60%ぐらいですね
なんてあっさり言われてしまうと。
向こうの方々もそういうのには慣れてるというか
まぁそういう現状があります。

ちなみに私アメリカに留学してる時の
隣の研究室で留学していた
日本人研究者の方も
ちょっとある癌になられまして
外来受診したらあっさりと癌ですよって告知され
何と言いますか
遠い異国の地で
抗がん剤治療を受けてたっていう
ちょっと辛い思い出がある方を知ってます。

幸い完治されたっていう風に
お聞きはしてるんですけども
それでそういう海外の例も踏まえて
私たち医師としては
重い病気であっても
希望を無くさないような
ただごまかすのではなく
正確に病名を伝えたいっていう
ふうには思ってるんですね。

だいたい外来に来られる方って
よっぽど足腰悪い方以外は
お一人で来られることが多いので
お一人で来られた外来に
言葉を選びながら
こんな病気が予想されてこんな感じですよって
お伝えするんですけども

そうすると日本の場合は
大体あのご家族からお叱りの
電話だったりクレームを受けることが多いんですね。
家に帰ってきたら
こんな風に言ってるんですが
非常にあの落ち込んでみたいな感じで
怒られちゃいますので

こちらもお伝えする時に慎重になってですね
ご家族と一緒に説明したいので
来てくださいっていうような
どうしてもそんな対応に
ならざる得ないっていうのが現状です。

この問題を考えるのにあたって
難しいと思うんですけども
日本人独特の文化と言いますか
精神構造なんでしょうか

否定はしませんけども
本人の病気なのに
家族だけ知ってる
本人が悲しむから
本人に伝えないでほしいだとか
そういうケースが非常に多いので
今一度考えてみて欲しいんですけども

自分自身のことなので
自分として本当に真実を知っておきたいのか
真実を知ったら
できることはあるのかないのか
そういうことを考えて
告げられたくない
重い病気を告げられる時の対応っていうのを
ご自分自身で決められるって言う事
シミュレーションして
おかれるのがいいんじゃないかなと。

ご家族との関わりもどうするのか
自分が非常に厳しいこと言われた時に
家族、奥さんになりご主人になり
子供さんなりにどうなのっていうような
そういうの話す
そういう機会っていうのも
設けておいた方がいいんじゃないかなって
いうふうに思います。

私自身は入院患者さん持ってる時に
重い癌の方
何人も持ったことあるんですけども
ご本人には告げないでくれって言うので
ご家族だけが病状を知ってるっていう
ご家族は患者さんのことを思い
告げないようにしてると。

患者さん自身はなんとなく気づいてるんだけど
家族のことを思い
家族にも主治医の方にも
病状を聞かないようにしてる。
明らかに知ってる節があるんですね

果たしてそれは幸せなのかな
どうかなということを
感じる場面が多々ありましたので
欧米なみにさらっと行くところまでは
なかなかまだ行かないと思うんですけども

大事な問題として
家族内で共有して
身の振り方と言うか
そういうことを聞いた時にどんなふうに
するのかなっていうのを決められてから行くと
医師とのすれ違いも少なくて
すむのかなっていう風に思います。

医者の選び方にも関係する
とこなんですけども
自分の主治医と良い関係が出来てると
例えば先生にあの悪い病気だった時は
隠さずにサクッと言ってね
みたいな感じで
お伝えしておくと
話もしやすいと思いますので

良い主治医の先生とめぐり逢い
信頼のおける
関係を構築しておくっていうのが
重い病気を告げられた時にも
その先は親身になって診てもらえるっていう
ひとつの良い方法じゃないのかなって
いうふうに思っています。

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