うつ

うつ病は生活習慣病です

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あなたの経営する会社にも、うつ病で苦しんでいる社員がいるかもしれません。
最初に知っていただきたいのは、うつ病は心の病ではなく、環境の影響で脳の機能が変化して起こる病気だということです。
よく精神が弱いからうつになるのだという人がいますが、まったくの間違いです。
あなたもうつ病になる可能性があるのです。

 

ストレスがうつ病の原因

「現代はストレス社会」などとよく言われます。このストレスが原因となり発症するのがうつ病で、90年代後半から急激に増加しています。
一方、アフリカや南米の狩猟採集生活者には、うつ病はほとんど見られません。
このことから分かるように、うつ病も生活環境が原因で発症する、糖尿病や高血圧と同じ生活習慣病なのです。
うつ病は、精神的に弱いことで起こる心の風邪などではなく、環境要因であるストレスの影響で、精神活動に関わる脳の機能が変化することによって起こる病気なのです。

 

経営者という立場のあなたは、社員がうつ病になる可能性もふまえ、うつ病が精神的な弱さなどではなく、環境の影響で脳の機能が変化して起こる病気であることを十分理解していただきたいと思います。

 

うつ病の原因であるストレスとは?

今から4億年ほど前、私たちの祖先である太古の魚は、生命の歴史上はじめて、外敵から逃れるすべを身に付けました。
危なそうなやつが現れたら危険を察知して、速攻で身を隠すことができるようになったのです。
これがストレスの始まりです。このとき危険な経験を記憶しておくための脳の領域も発達しました。
危険なことを記憶することにより、危険を早めに察知して対処できるようになったのです。

 

人はストレスにさらされると交感神経が活性化されて、心拍数、呼吸数が増え、汗が出て、血圧や血糖値が上がり、筋肉が収縮します。
いずれも危険にすぐに対応するための反応ですね。
ストレスは生物が生き残るためには必要不可欠な生体防御反応なのです。

ストレス反応は、ノルアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンによって引き起こされます。
ノルアドレナリンは、脳で産生される神経伝達物質です。
ストレス反応で中心的働きをしているので、「闘争か逃走か」のホルモンとも呼ばれています。
ノルアドレナリンの刺激が過剰になると不安や不快な気分になります。

 

ノルアドレナリンとは対照的に、快感、満足感を与える神経伝達物質がドーパミンです。
行動するための動機づけを与える物質ともいえます。
ドーパミンが極端に不足するとパーキンソン病になり、自分の意志で動くことが難しくなり、精神的な停滞状態になります。
逆にドーパミンが過剰になると、精神分裂病の症状である幻覚を引き起こしたりします。

 

うつ病ではセロトニンが減っている

ストレスを考える場合、このノルアドレナリンとドーパミンのバランスが重要なのですが、もう一つ忘れてはいけないのがセロトニンです。
この名前も最近よく耳にするのではないかと思います。

 

セロトニンは覚醒ホルモンとも呼ばれています。
その名の通り、睡眠中にはほとんど産生されていませんが、朝起きて光の刺激を受けることによって産生され始め、起きている間中、一定のリズムで脳内に放出され続けます。
一番原始的な脳といわれるところ(脳幹)で作られますが、脳全体に運ばれ神経活動全体に影響を及ぼしています。

 

セロトニンの役割は、起きているときの活動がスムーズに行えるように、脳の神経活動を適正に保つことです。
さまざまな神経のシグナルの感受性を高めたり、シグナルが強すぎるときは抑制したりしています。
自動車のパワーステアリングとサスペンションの両方の働きをしているようなものです。
そのためセロトニンの分泌が盛んになると、気分が晴ればれして、楽天的になります。
逆にセロトニンが不足すると、ちょっとしたことでキレやすくなり、ストレスによって不安になりやすくなります。

 

セロトニンはストレスの感受性に強く関係しています。
セロトニンが不足するとストレスへの感受性が高まり、悲しみや失望感が強くなり、喜びを感じにくくなってしまいます。
これが高じた状態が「うつ」です。うつ病患者の脳では、セロトニンが不足していることが分かっています。
セロトニンはうつ病に深く関係しているのです。

 

次回はセロトニンの役割を中心に、うつ病になるメカニズムについてお話しします。