生活習慣

睡眠不足を甘く見てはいけない理由

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あなたが40歳を超えているなら、睡眠不足になるような生活はできる限り避けることをおすすめします。

ご実感があることと思いますが、若いころは簡単に体内時計(外界の物理的条件とは無関係に、生物体内に備わっている時間を感じる能力のことを体内時計と呼びます。人間はほぼ24時間を一周期としたリズムを持っています)の乱れを修正できるのですが、年をとってくると大変になってきます。

20代までは「徹夜なんてへっちゃら」だったのに、40〜50代にもなると、ちょっとした寝不足で数日だるい、なんてことになりますね。

睡眠不足より怖いのは

体内時計の乱れは単に疲労に結びつくだけでなく、「生活習慣病」「うつ病」「がん」の原因になることがすでに証明されています。

職業的には、国際線パイロットやキャビンアテンダント、夜勤の多い看護師に「肥満」「糖尿病」「うつ病」「がん」が多いことも報告されています。

つまり、経営者や管理職、フリーランスなどこのコラムをご覧になっている仕事で大きな責任を担っているあなたは、睡眠不足を甘く見てはならないのです。

体内時計の乱れがなぜ様々な病気に結びつくのかについては、かなり解明されてきています。
私たちの身体の中で起きている生命活動には日内変動というものがあり、エネルギーを日中は活動に使い、夜はため込む、というのもその1つです。“夜食べると太る”というのは正にこれです。

睡眠不足と「うつ」の関係

「うつ」については、セロトニンの日内変動が関わります。セロトニンとは、「ノルアドレナリン」「ドーパミン」と並んで、体内で特に重要な働きをしている三大神経伝達物質の1つです。

セロトニンは心の安定に重要な働きをしていることから、「しあわせホルモン」とも呼ばれています。現代社会はセロトニン不足になりやすい環境であり、セロトニンが不足することにより、うつ病や不眠症を引き起こすことになるのです。

睡眠不足であっても毎朝規則正しい時間に起きたほうがよいとお聞きになったことがあるかと思います。これにはちゃんとした理由があるのです。

動物は目から受ける朝日の光の刺激によって、脳でセロトニンを作り始め、14時間くらいするとセロトニンからメラトニンを作るようになります。メラトニンは睡眠ホルモンなので、夜眠くなるわけです。睡眠不足のリセットには早起きして朝日を浴びるのが大切なんですね。

セロトニンはストレスを和らげる役割を果たしているのですが、生活リズムが乱れると、脳におけるセロトニンの産生が落ちてきます。その結果ストレスを感じやすくなり、うつになってしまうのです。

昼夜逆転の生活をしている若者が切れやすいのも、セロトニンの産生が落ちているからと言われています。

ストレスを感じやすくなるのを防ぐためにも、セロトニンをしっかり作れるよう、睡眠不足を避けたいところです。仕事に支障が出るような事態を招かないよう、早めの対処を心がけてください。

睡眠不足の助っ人は腸内細菌

睡眠不足によってセロトニンの産生が落ちてくることから、セロトニンの原材料であるトリプトファンを多く含む食品を摂るとよい、ということが言われます。

トリプトファンは、肉や魚といった動物性食品や、ミルク、大豆、ナッツに比較的多く含まれています。寝る前にホットミルクを飲むのはおすすめですね。

ただし、トリプトファンを多くとるだけでは実際はそれほどセロトニンが増えることに結びつきません。

ここで、セロトニンを作り出すために重要な働きをするのが、あなたも最近耳にされることの多い「腸内細菌」なのです。精神状態に腸内細菌が影響している、というわけです。その意味でプレバイオティクス、プロバイオティクスは睡眠不足にも良いと言えるでしょう。

実は体内時計の調節にも腸内細菌が関わっており、時差ボケで腸内細菌が変動することも報告されています。このことから、腸内細菌をうまくコントロールできれば、時差ボケが治せるかもしれない、とも言われています。

睡眠不足の時のカフェイン摂取

大変重要なこととして、睡眠不足の時には、睡眠の質が問題になります。短い睡眠でも深い眠り(徐波睡眠)が取れれば、ダメージを少なく抑えることができます。

そこで問題になるのがカフェインです。あなたは「睡眠不足の時は、コーヒーを飲んでいてもすぐに眠れるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、これは間違いです。

夕方以降にカフェインを摂取すると、明らかに睡眠の質は落ちます。睡眠時間が不足しそうであればなおのこと、寝る前のカフェイン摂取は控えた方がいいでしょう。

睡眠を深くするためには、成長ホルモンが有用です。成長ホルモンはある一定強度以上の運動をすると効率よく出ます。また、運動は睡眠の質を良くするだけでなく、糖尿病や高血圧、メタボ予防にも高い効果を持っています。

お仕事において、重責であればあるほど、睡眠時間や睡眠の質を大切にする意識を持っていただきたいと思います。

(※本サイトの内容は、記事投稿及び更新時点での医療の一般的な知見を前提とした、執筆者の見解、研究結果をもとに作成されております。また、本サイトはがんや生活習慣病など特定の疾病・障害の予防・改善を保証するものではありません。)

睡眠不足対策のポイント

特効薬はない。トリプトファンを多く含む食品、肉や魚、ミルク、大豆、ナッツなどを意識的に摂る。寝る前にホットミルクを飲む。腸内細菌を意識して、発酵食品やサプリメントの摂取、適度な運動、そしてなにより睡眠を心がけてください。